メロンの網目を迷路に見立てて指でなぞっていたら
絡め捕られて迷いこんだ。
実際のメロンの中は、味と裏腹に居心地が悪いので、よい子は真似しないように。
2004年2月6日金曜日
2004年2月5日木曜日
アスパラガス
アカリは魔女。まだ修行中の11歳。
アカリの一族は身の回りのものを食べ物に変える術を大切にしているんだ。
この地方では昔、「キキン」と言って、畑の作物が取れなくて、おなかをすかせて死んだり、病気になることがよくあったんだって。
だから村の人を助けるために、食べ物に関係のある魔法がたくさんあるんだよ。
あたしがいま一番得意なのは「ロウソクをアスパラガスに変える術」。
火のついたロウソクに呪文をかけるの。
呪文は覚えにくいし、あんまりカッコよくない。
「つけにせひのほげらっぱ」
そうするとロウソクは緑のアスパラガスに変わっちゃう。
大きくておいしいのよ。今度ごちそうしてあげるからね。
でもさ、アスパラガスも大事だけど、ロウソクも大事でしょ。
だからちょっと困ってるの。
アカリの一族は身の回りのものを食べ物に変える術を大切にしているんだ。
この地方では昔、「キキン」と言って、畑の作物が取れなくて、おなかをすかせて死んだり、病気になることがよくあったんだって。
だから村の人を助けるために、食べ物に関係のある魔法がたくさんあるんだよ。
あたしがいま一番得意なのは「ロウソクをアスパラガスに変える術」。
火のついたロウソクに呪文をかけるの。
呪文は覚えにくいし、あんまりカッコよくない。
「つけにせひのほげらっぱ」
そうするとロウソクは緑のアスパラガスに変わっちゃう。
大きくておいしいのよ。今度ごちそうしてあげるからね。
でもさ、アスパラガスも大事だけど、ロウソクも大事でしょ。
だからちょっと困ってるの。
2004年2月4日水曜日
2004年2月3日火曜日
ほうれん草
「もう、限界なの」
私は相手の顔を見ずに言った。
視線の先にはほうれん草のおひたし。
小さな陶器に盛られたおひたし。
この器はふらりと寄った陶芸作家の個展で見つけたのだった。
ちょっと高いけど、ひとめで気に入った。
目の前の男と私の分、へそくりで買った。
それ以来、おひたしはこの器、すっかり食卓の定番になった。
別れてもこの器は手放さないようにしなくては。
私はそんなことを思いながら、ほうれん草に向かって静かに別れの訳を語り続けた。
「言いたいことはよくわかった」
男もまた、私の顔を見てないだろう。
男は未練がましくいいわけをしているようだ。
黙ってほうれん草のおひたしを食べる。
話を聞いてくれたのは、ほうれん草。
私は相手の顔を見ずに言った。
視線の先にはほうれん草のおひたし。
小さな陶器に盛られたおひたし。
この器はふらりと寄った陶芸作家の個展で見つけたのだった。
ちょっと高いけど、ひとめで気に入った。
目の前の男と私の分、へそくりで買った。
それ以来、おひたしはこの器、すっかり食卓の定番になった。
別れてもこの器は手放さないようにしなくては。
私はそんなことを思いながら、ほうれん草に向かって静かに別れの訳を語り続けた。
「言いたいことはよくわかった」
男もまた、私の顔を見てないだろう。
男は未練がましくいいわけをしているようだ。
黙ってほうれん草のおひたしを食べる。
話を聞いてくれたのは、ほうれん草。
2004年2月2日月曜日
2004年2月1日日曜日
衝撃
オレはやわらかいトンネルの中にいる。匍匐前進。ゆっくりゆっくり進む。
もう何十時間もこうして少しづつ進んでいる。どこへ向かっているのか、わかっている。でも、わかっていないのかもしれない。
頭が窮屈で痛い。とにかく狭いトンネルなのだ。頭でトンネルを押し広げながら進むしかない。
時折、トンネル全体がひずみ、身体中が締め付けられる。こんな痛みは初めてだ。気が遠くなる。それでも進むのをやめるわけにはいかない。
前方にかすかな光を感じ、オレはやや元気を回復した。とにかくあそこまで行けばいいのだ。
だんだんと光は大きくなってきた。しかし、それに伴い頭痛もひどくなっていく。「もう、だめだ」
今度こそ本当に気を失う、と思ったそのときオレは光の射す方へと一気に押し出された。強い光と冷たい空気がオレを突き刺す。さっきまでオレがいた、薄暗く暖かな世界とは大違いだ。
オレはこれからこんな世界で生きていくのか!
恐れ戦いたオレは、あらんかぎりの大声で泣き叫んだ。
オレの渾身の叫びを聞いて喜んでいる女がいる。
********************
500文字の心臓 第34回タイトル競作投稿作
○1
もう何十時間もこうして少しづつ進んでいる。どこへ向かっているのか、わかっている。でも、わかっていないのかもしれない。
頭が窮屈で痛い。とにかく狭いトンネルなのだ。頭でトンネルを押し広げながら進むしかない。
時折、トンネル全体がひずみ、身体中が締め付けられる。こんな痛みは初めてだ。気が遠くなる。それでも進むのをやめるわけにはいかない。
前方にかすかな光を感じ、オレはやや元気を回復した。とにかくあそこまで行けばいいのだ。
だんだんと光は大きくなってきた。しかし、それに伴い頭痛もひどくなっていく。「もう、だめだ」
今度こそ本当に気を失う、と思ったそのときオレは光の射す方へと一気に押し出された。強い光と冷たい空気がオレを突き刺す。さっきまでオレがいた、薄暗く暖かな世界とは大違いだ。
オレはこれからこんな世界で生きていくのか!
恐れ戦いたオレは、あらんかぎりの大声で泣き叫んだ。
オレの渾身の叫びを聞いて喜んでいる女がいる。
********************
500文字の心臓 第34回タイトル競作投稿作
○1
登録:
投稿 (Atom)