2011年12月25日日曜日

薄明のメロディー

お酒を飲むと、ふわふわとよい心持ちになる人は多いと思うが、本当にふわふわと宙を歩く人は、なかなか居ないものだ。


私の友人のバカリーは、コルネット吹きのやさしい男だ。いつもにこにことしているから、年寄りや子供や猫によく声を掛けられる。


彼も私も酒が好きで、機会をみては二人で飲みに出掛ける。しゃべるのは私ばかりで、バカリーはもっぱら聞き役だ。


もちろんたまにはバカリーも話をする。いつも決まって、尻尾を切られた黒猫と女の子の思い出話だ。女の子は、もうすっかりきれいな娘になっているらしい。


すっかり語り合って薄明、彼は顔を赤く染め(それは酔った男というよりも、恥らう少年のようなのだ)、「今夜は素敵だった。ありがとな」と言って、そのまま空中散歩に出かけてしまう。


「おーい、バカリー、落っこちるなよ!」


私は空に叫んで、千鳥足で家に向かう。


だんだんと明るくなる町を、バカリーの奏でるコルネットが祝うのだ。



コルネット吹きのチョット・バカリーは、四千四秒物語に出てきます。