その世界ではすべてのものを針金ハンガーから創りだすらしい。
少年が針金ハンガーをグイッと引っ張って出来上がったのは、ボウガンだった。
「戦いがあるのか?」と尋ねると、「イヤ、ここは平和だ」と言って、もう一度グイッと針金ハンガーを変形させた。
ギターだった。少年の歌声が、モノクロの世界に響く。すべてが鉄線、それもまたよい。
その世界ではすべてのものを針金ハンガーから創りだすらしい。
少年が針金ハンガーをグイッと引っ張って出来上がったのは、ボウガンだった。
「戦いがあるのか?」と尋ねると、「イヤ、ここは平和だ」と言って、もう一度グイッと針金ハンガーを変形させた。
ギターだった。少年の歌声が、モノクロの世界に響く。すべてが鉄線、それもまたよい。
職人は私の足に恭しく靴を履かせた。
それはぴったりに見えたのに、職人はなにかが気に入らないらしく、ブツブツ言いながら足を触る。
「作り直します」と職人はキッパリと言い、出したばかりの靴を慌ただしく箱に収めた。
ガラスの靴が、ショーケースに並んでいる。私の靴は、ガラスの靴でなくていいのだ。
でも、どんな靴を作るかは、職人が決めること。
シンデレラにさせられるのか、そうではないのか。
私はしばらく不安な日々を過ごす。
「酒が飲みたいって? 生憎、ここにはパブなんて一軒もないよ」
赤い顔をしたおじさんは言った。おじさんは一体どこで飲んできたんだ?
「そんな顔をするな、ここにパブはない。だが、呼ぶことはできる」
おじさんは着古したジャケットのポケットから、小さな小さなバイオリンを取り出した。
「フィドルだ」
マッチ棒みたいな弓を器用に指先で摘み、おじさんはフィドルとやらを演奏し始めた。それは思いのほか大きな音で、夕闇の田舎町に響いた。
呆気にとられていると、いつのまにやらアコーディオンの音色まで聞こえてくる。どんどん楽器が増えていく。
風が吹く。なんだかよい香りだ。
「ほら、そろそろ来るぞ、よーく見てな」
そう言われて、思わずパチクリ瞬きすると、そこはもう賑やかなパブの中なのだった。手にはウイスキーの入ったグラス。
おじさんはお客たちの合間を歩きながら、陽気にフィドルを弾いている。ミニチュアのフィドルじゃなくて、普通の大きさだ。
ウイスキーを一口飲み、顔を上げると、おじさんが近くまで来ていた。
「ほら、パブがやって来ただろう?」
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アイリッシュパブのほら話投稿作
松本楽志賞 受賞
よちよち歩きの人々が、我先にとどんぐりを拾っている。
みな真剣である。
小さな人々に囲まれたどんぐりの木もまた、真剣である。
どんぐりを落とす。次々落とす。
コトン、と頭にどんぐりが落ちて、人々は大喜びである。
秋である。