新しい縮毛矯正が開発されて、友人は早速試した。さらさらな髪にご満悦だ。
私は彼女に一本の白髪を見つける。抜いて欲しいというのでそれを辿ると、根元に向かって太くなっていく。頭皮に至ると親指くらいの太さがあったが、ちょっと引っ張るとあっけなく抜けた。大きな毛穴を覗き込む。なにやら蠢くものが見える。右手に握った白髪がぶるんと震えた。
(163字)
2009年8月20日木曜日
2009年8月18日火曜日
2009年8月17日月曜日
2009年8月14日金曜日
夢 第二夜
生前葬に呼ばれる。
食事を始めて暫くすると、ストレッチャーに乗った旧い友人が現れた。治療法の確立されていない難病に冒され、余命いくばくもなくなり、生前葬を決めたらしい。
十数年振りに見る彼はげっそりとやつれ、髪は真っ白になっていた。あちこちにチューブや包帯を付け、痛むのか頻りに左の太股を擦っていた。
はち切れんばかりの笑顔の彼は、そこにはなかった。私は彼にずいぶんと世話になった。逞しい彼は、少々お節介だったけれども、確かに私の騎士だった。
感謝を伝えたかった。病との闘いを労いたかった。しかし虚ろな目の彼に掛ける言葉が見つからない。いくら咀嚼しても唾液が出ないまま、出された食事をもそもそと臙下し続ける。
(300字)
食事を始めて暫くすると、ストレッチャーに乗った旧い友人が現れた。治療法の確立されていない難病に冒され、余命いくばくもなくなり、生前葬を決めたらしい。
十数年振りに見る彼はげっそりとやつれ、髪は真っ白になっていた。あちこちにチューブや包帯を付け、痛むのか頻りに左の太股を擦っていた。
はち切れんばかりの笑顔の彼は、そこにはなかった。私は彼にずいぶんと世話になった。逞しい彼は、少々お節介だったけれども、確かに私の騎士だった。
感謝を伝えたかった。病との闘いを労いたかった。しかし虚ろな目の彼に掛ける言葉が見つからない。いくら咀嚼しても唾液が出ないまま、出された食事をもそもそと臙下し続ける。
(300字)
2009年8月12日水曜日
2009年8月11日火曜日
銀河ステーション
別れを惜しむ恋人たちを尻目に、私は仁王立ちで汽車を待っている。
ステーションには次々と汽車がやってくるが、私の乗るべき汽車はずいぶん遅れているらしい。数十億光年の長距離汽車だから仕方がないのかもしれない。
しかし私は待ちくたびれた。足がホームに張りついたように動かない。
馴染みの駅員が私の前に立ち、一口だけ駅弁を食わせてくれる。
残りを頬張りながら、駅員は改札に戻って切符切りを始める。鋏の音につられて、私の心の臓は大儀そうに鼓動を続ける。
私は一体なんという星を目指して汽車に乗ろうとしているのだろうか、ふと不安になる。さっきまで確固たる確信の下に汽車を待っていたはずなのに、よくわからなくなっている。今の私に切符を確かめる術はない。
煌めく星星の眺めと裏腹に、ホームの一寸先は宇宙の闇。汽車など待たず、足が動くうちにホームの向こうへ歩きだせばよかったのかもしれない。ほんの三歩歩ければ。
また汽車が来る。
駅員が慌て走ってきて私をひょいと持ち上げ、車掌に渡す。死んでないだろね、トランクのほうが重たくなってら、と車掌が笑う。
(457字)
ステーションには次々と汽車がやってくるが、私の乗るべき汽車はずいぶん遅れているらしい。数十億光年の長距離汽車だから仕方がないのかもしれない。
しかし私は待ちくたびれた。足がホームに張りついたように動かない。
馴染みの駅員が私の前に立ち、一口だけ駅弁を食わせてくれる。
残りを頬張りながら、駅員は改札に戻って切符切りを始める。鋏の音につられて、私の心の臓は大儀そうに鼓動を続ける。
私は一体なんという星を目指して汽車に乗ろうとしているのだろうか、ふと不安になる。さっきまで確固たる確信の下に汽車を待っていたはずなのに、よくわからなくなっている。今の私に切符を確かめる術はない。
煌めく星星の眺めと裏腹に、ホームの一寸先は宇宙の闇。汽車など待たず、足が動くうちにホームの向こうへ歩きだせばよかったのかもしれない。ほんの三歩歩ければ。
また汽車が来る。
駅員が慌て走ってきて私をひょいと持ち上げ、車掌に渡す。死んでないだろね、トランクのほうが重たくなってら、と車掌が笑う。
(457字)
登録:
投稿 (Atom)