2019年1月15日火曜日

驚くべき光景

その人は、左腕を手に取り、消えず見えずインクのあたりを確認した。
それからシャツをめくりあげて、背中の消えず見えずインクをそっと撫でた。

背中がみるみるうちに温かくなり、冷えていた心も溶けていくようだった。
肩に止まった赤い鳥は、沈黙している。
こちらにどうぞ、という仕草をするので、付いていった。
ビルのひとつに入り、エレベーターに乗った。長い長い上昇だった。

屋上に出、その景色に息を呑んだ。見下ろす街が、青銅色ではなかったからだ。
実にカラフルな街並みが、眼下に広がっていた。ジェリービーンズのような街並みが眩しくて、目が痛いほどだ。
「次の街に行きますか?」と、その人は言った。赤い鳥を介さず、言葉が聞き取れた。
「……こんな色だったんですね、本当は。もう少し眺めていたい」
呟くと、その人はニッコリ笑った。