2019年1月30日水曜日

戸惑いの痺れ

美しい人は、おそらく目を覚ましていたと思うが、引き留められることはなかった。
赤い鳥を肩に乗せ、喧噪の街へ出た。
今日も天気はよく、そして耳に入る音はとんでもない。
だが、雑音が、考え事にはちょうどよかった。

美しい人との交わりを回想する。互いの消えず見えずインクに触れあった時の甘い痺れを思い出す。
転移の能力を人体に添付する消えず見えずインク。それだけだと思っていた。あんな官能的な感覚を引き出す作用があるとは。

いや、あの人が美しかったからだ。消えず見えずインクは関係ない。
いやいや、やはり、消えず見えずインクの仕業だ。そうでなければ、あのような感覚はあり得ない。
次の街でも、また、出会えるだろうか……同じインクを肌に持つ人に。

危険な考えだと知りながら、そんな思いがどうしても湧いてくる。