2013年9月4日水曜日

Re: 無題

飼い猫がにゃーにゃーと鳴いているので、探すけれども見つからない。


あちこち探して、姿見の前を通りがかったときに目の端に猫の姿を捉えた。


反射的に姿見が映しているあたりを見るけれども、そこには居ない。果たして猫は鏡の中に入ってしまったのだった。


「どうやって入ったの?」


私は姿見の前にしゃがみこんで、猫に問うた。


にゃーと答えるばかりで人間にはわからない。猫も事情を察しているらしくて、こちらに懸命に訴えてくる。にゃーにゃー。


私は家中の鏡を引っ張り出してきて、姿見の前に並べた。なんだか魔術でもはじまりそうだ。


あっちこっちに鏡の位置を変えたり、上から横から覗いたりしていると、猫は別の鏡に映ったり映らなかったり、移ったり移らなかったり。


そうこうしているうちに、一番小さな手鏡からヒョイと飛び出してきた。


以来、鏡は必ず布を掛けているが、それでも時々知らない猫が鏡から飛び出してくる。