2012年4月12日木曜日

あおぞらにんぎょ

空を自在に泳ぐ人魚は、それなのに翼が欲しかった。


「そんなに綺麗な鱗もあるのに」


人魚の身体は、お日さまを浴びるとキラキラと輝く。


「そんなに上手にお歌も歌えるのに」


人魚の歌声は、鈴のように澄んでいる。


「でも、空は泳ぐものじゃなくて、飛ぶものでしょ?」


そう言うときの人魚の目はいつも涙が溢れそうになる。


「それじゃあ、海で泳げばいいよ」


そんな声が聞こえたから、南の島のあるところまで、空を泳いできた。


ここは空が青くて、海も青くて、あおがあおすぎて。


でも、海に飛び込む勇気はない。海面近くまで降りたり、やっぱり空へ戻ってみたり。


ずっとそんなことをしているから、人魚は今、空を泳いでいるのか海を泳いでいるのかわからない。