2012年4月23日月曜日

期限切れの言葉

すべての言葉は、思想してから、八分以内に言葉として発しなければならない。


そうプログラムされた人々は、おしゃべりになった。言葉が町にもテレビにもネットにも溢れた。


八分が過ぎたらどうなるのだろう? と多くの人が考えたが、プログラムされてしまった以上、もはや言葉を抑える術はない。八分黙っていることなど、できないのだった。


 


少年は、自らのプログラムを解除することに成功した。


プログラムは、単純ではなかった。八分を過ぎた思考は、永久に消滅するというプログラムも組み込まれていることを、少年は発見していた。


 


久しぶりに沈黙を獲得した少年は、町の眩しさと喧騒に戸惑ったが、その戸惑いを即座に口にしないでいられることを誇りに思った。言えば、悪態になるに決まっている。


少年は、友人に会う。「やあ、ひさしぶり」


少年が噛み締めるように言う間に、友人はどこに行っていただの、何をしていたのだの、お前は頭がおかしくなったのかだの、止めどなく聞いてくる。


少年が、しばらく黙っていると、友人の言葉はようやく収まった。少年の応えを待つために友人の思考は一旦停止したらしい。


二人の少年を中心に、沈黙が漣のように街に広がった。


八分以上前の思考はどこに行ったのだろう? と多くの人が考えたが、期限切れの言葉を発する術は、誰も持たない。



書きながら、だんだんわけがわからなくなった。(あたまがわるい)