2008年9月5日金曜日

先生の言う通りに

友達のちょっかいが癪に触ったのだろう、今にも暴れだしそうな少年を先生は肩を掴み、しっかりと見つめる。
「ほら、深呼吸して。先生の目を見てごらん」
はじめは顔を反らしていた少年も、しばらく見つめられているうちに根負けしたのか、ようやく先生に顔を向けた。
少年は先生の眸にイルカが浮かんでいるのを見た。イルカは少年に気がつくと、飛び上がってくるんと回ってみせた。
「イルカ……?」
そう呟くと、イルカは水に潜ってしまう。目の前には先生の顔があるだけ。
気がつくとあれほどドクドク騒いでいた心臓も落ち着いている。
「もう大丈夫だね、席に戻りなさい」
もう一度、先生の顔を覗き込むが、急に恥ずかしくなったのか、少年は黙って席に戻る。