2008年9月10日水曜日

鐘尽堂動物園

キリンの首が長いのは、みなさんよくご存知でしょうが、ここの園のキリンの首といったら、長いの長くないのって。
ただ長いだけじゃあ、ありませんよ。自在に伸びてあっちへくねくね、こっちにくねくね、よく動き回ります。
キリンのろくろ首? しぃ。それは言わない約束ですよ、和江はひどく怒りますから。
和江は、賢くて気立てのいい奴です。四六時中長い首で園を見廻って、園内の動物の世話を焼いてくれる。皆慕ってますよ。たびたび私のところへやって来ては、やれ象の松助さんが下痢気味だ、チンパンジーの千代さんが悋気の虫だ、フラミンゴの三郎くんが骨折した、と逐一報せてくれます。
「せんせ、かあいそうだから、すぐ行って見てやっておくれよ」
てなことを言いますよ。
えぇ、獣医を始めてかれこれ三百……何年でしたかな。ここへ来てから百八十八年、こんなに楽させてもらってる園はありませんよ。
おっと、閉園の鐘が鳴りましたな。鳴り終わる前にお帰り下さい。え? なんと、おたくさんには聞こえないと。それはいけません。
和江、ちょっと。ライオンの銀二を呼んできておくれ。あぁ、そうだ、ご馳走だよ。こちらのお客さまだ。