2005年12月22日木曜日

ご自慢の傘

銀座の街を老紳士がフキの葉の傘を差して歩いていた。
仕立ての良さそうな服に包まれ、速くも遅くもない歩調で進む彼は、実に雨の銀座にお似合いだ。
「結構な傘ですな」
と話しかけると、老紳士はにっこりと微笑んだ。
「貴方こそ良い傘をお持ちじゃございませんか」
愛想のない黒い私の傘は、青々としたフキの葉になっていた。