2005年11月17日木曜日

どうか、傘が溶けませんように

「雨がくるぞ!」
キュウカクが鼻をひくつかせて叫ぶ。
人々は、嬌声をあげながら大急ぎで建物の中に入り、傘を差す。

ぱらぱらぱらぱら
これは雨がやってきた音。ぱちぱちぱちぱち
これは人々が傘を差す音。

誰もいない大通り。
道が黒く濡れる。
木々は緑が濃くなる。
建物の窓から色とりどりの傘が見える。

「ほら、雨が来たよ……」
右手で傘を持ち左手で妻の肩を抱き寄せて、雨が通るのを眺める。
向かいのビルの窓、ヤンさん夫婦が抱き合ってる。実に器用に二人の身体で傘を支えながら。