2005年9月25日日曜日

空の風呂敷

深川鼠に朱色の水玉の風呂敷―一体どこでこんな柄の風呂敷を売っているんだが―を持って、八年ぶりに弟は帰って来た。
「ただいま」
と言うなりその趣味の悪い風呂敷の包みをどさっと降ろし、それを開いた。
中は、空だった。
弟が見ていた海の向こうの空模様は、風呂敷よりもけばけばしく、それでいて魅惑的だった。
じっと空を見下ろしている私に
「どうしても、持って帰りたくて」
と照れ臭さそうに笑った。
深く息を吸い込む。これが弟を魅力した空の匂い。

【深川鼠C20M0Y30K33】