2004年1月16日金曜日

父の真実

長助は刀を振り回しながらいつしか涙を流していた。
そして、刀を降ろした。

長助の父、長吉も、父の仇討ちを狙う為に、隣国のスパイを監視する忍者になった。
監視を続けるうちスパイの女と長吉は恋に落ちた。
それが知れ渡り、やむなく自害することとなったのだ。
父は殺されたように見せかけるため、女に斬らせた上で、転げ落ちるようにして川へ飛び込んだのだ。
長助の初めて知る父の姿だった。
奥から娘が出てきた。7,8歳だろうか、色の白い子だ。女は言った。
「あんたの妹さ。あたしは自分の国に帰らなきゃいけない。どうか、この子を養ってやってください」

父の死の真相は明らかになった。
もう、長助に恨む者はない。
三代続いた父の仇のための忍者ごっこはおしまいだ。
いや、終わりにしなければならぬ。
これ以上戦ってもまたお互い仇を生むだけだ。
長助は忍者の看板を降ろした。
そもそも隣国のことなんて何一つしらないのだ。
長助は鍛冶屋に専念し、山菜売りは母と妹が継いだ。
長吉16の秋のこと。