2004年1月15日木曜日

父の仇

そしてついにその機会はやってきた。
山菜を買う奥さんの輪の中に鋭い目をした女がいたのだ。
若くないが身体が引き締まっているのが着物の上からでも見て取れる。
なんともないようで隙のない身のこなし。
長助は時間をかけて女を追った。ここで焦ってはいけない。

やっとのことで女の住まいを見つけだした。
「ごめんください。山菜のご用はありますか?」
「悪いね、うちは間に合ってるよ。」
長助は背中に隠した刀を取り出し、声色を変えた。
「ここであったが百年目、盲亀の浮木、うどんげの花・・・」
「長吉つぁん?」
女は父の名をつぶやいた。
「やはり、おぬしが父の仇。覚悟致せ。」
長助は女に切りかかった。
女はひらりと身を翻し、戸の脇に常備していると見える刀を手にした。
激しく刀を交えながら女は喋り続けた。
「あんた、長吉っつぁんの倅だね?あたしの話を聞いとくれ。」
「問答無用」
「そんなら勝手に喋るわ」