2013年5月14日火曜日

無題

おじいさんの傘は、半分青くて、半分赤い。几帳面なおじいさんはきちんと青い方を右側にして傘を差す。


雨雲はそれが気になって、ついついおじいさんを追いかけてしまうから、おじいさんはいつも半分雨で、半分晴れ。



5月14日ついのべの日 お題


2013年5月12日日曜日

樹上鉱脈

その森は広大な鉱脈で、多くの貴重な鉱物が採れる。


もっとも多く採れるのは銀だが、それを採ることができるのは、選ばれたムササビだけだ。


この森の銀は、樹々の枝先から採れるのだった。冬の夜になると、月光に照らされて森は輝く。


選ばれしムササビは人間にリュックサックを作らせ、輝く枝先を目指して樹間を飛び回、銀を集める。


銀が詰めこまれたリュックサックは殊更に輝き、最盛期には流星をも圧倒する素早さでムササビたちは飛び回るのだ。


 



2013年5月7日火曜日

注意散漫

ペルーの老人は、シチューを作る妻の周りをウロウロしている。
そそっかしい妻は、パンと間違えてストーブで焼いてしまった。
なんて焦げ臭いこのペルーの老人。


There was an Old Man of Peru,
Who watched his wife making a stew;
But once by mistake,
In a stove she did bake,
That unfortunate Man of Peru

エドワード・リア 『ナンセンスの絵本』より

2013年5月4日土曜日

無題

庭の落ち葉を積み上げて積み上げて、生涯を掛け腐葉土山を作り続けた男の死後、頂上に向日葵が生える。



2013年4月29日月曜日

夜空の破れ目


かたつむりの殻に落ちた青紫の小さな小さな水滴は、ゆっくりぐるりと殻の渦巻きを流れ落ち、紫陽花の蕾に吸い込まれた。

夜空から青紫色のお裾分け、ほんの一滴。



2013年4月26日金曜日

エジプト土産

 パピルスの巻物が届いた。
 中には「エジプト土産です」と母の字で書いてある。一体いつエジプトに行ってきたのだろう、そんな話は聞いていない。
 電話して尋ねてみると「エジプトって、あの、テトラポットの?」と、頓珍漢なことを言っている。ピラミッドも言えない人がパピルスを知っているほうが可怪しい。
 じゃあ、このパピルスは誰が送りつけたものだろうか。気色悪く思いながら開くと、中には日本語で、「笠地蔵」の話が書いてあるのだった。
 娘に読んで聞かせると、大変に喜んだ。次の晩は「舌切雀」になっていて、これも喜んで聞いていた。エジプト土産には謎が多い。


2013年4月22日月曜日

お迎え

僅かながらの小銭を握りしめて出て行ったままの私をそろそろ迎えに行かなくちゃならないけれど、七歳の私が何が欲しかったのか、もう思い出せない。今なら、買ってあげられるはずなのに。