2009年10月1日木曜日

へたっぴサーカス、サーカスを見る

 サーカス団のへたっぴ三人組は今夜も公園でのこっそりお稽古に出かける。
 公園には、先客がいた。いつもゾウのミマノが玉乗りの練習をするあたりに、野良猫が一匹寝ているのだ。
 「こまったな」とおどおどしているのは、ライオンのコギュメだ。ライオンのくせに野良猫一匹追い出すことができない。
 仕方なく野良猫の邪魔にならないように、ひとりづつ変わりばんこに稽古することにした。一番目は、綱渡りの少女ニイナ。ところが綱が絡まってなかなか解けない。ミマノの鼻や、コギュメの尻尾も手伝おうとするけれど、綱は絡まるばかり。とうとうニイナの練習時間は終わってしまった。
 次にライオンのコギュメが火の輪くぐりを始めたけれど、野良猫がいるから助走距離がいつもより短い。踏鞴を踏んでばかりでうまく走ることすらできない。
 それを見ていた野良猫が「にゃーお」と話しかけてきた。飛び上がるほど驚いたコギュメは、ようよう野良猫に返事をする。
「こんばんは、猫さん。いい月の晩にお騒がせします」
 すると、猫はこう言った。
「あんたたちも、サーカスやってるのかい? おいらも今、サーカスの稽古中なんだ。ちょっと見てやってくれ」
 へたっぴな三人は顔を見合わせた。サーカスどころか、どう見たって猫は寝ているだけなのだ。
 こっちこっち、と猫は尻尾で三人を呼び寄せた。
「よくよく見ろよ、目ん玉凝らして見るんだぞ」
最初に気がついたのはライオンのコギュメだ。身をよじってモゾモゾしている。
「あら!」
 ニイナもミマナも気がついた。猫の毛皮の中で、小さな小さな蚤のサーカスが繰り広げられていたのだ。
 蚤たちは、突如現れた観客に大喜び。綱渡り蚤は綱渡りを往復二十三回もやって見せ、玉乗り蚤は猫の体を隈なく動き周り、火の輪くぐり蚤は火の輪に火を付け過ぎて、危うく猫が火傷しそうになった。
サーカスが終わると蚤たちが整列して高く高くジャンプした。
「どうもありがとう。明日はきみたちのサーカスが見たいな」
身体中を掻きながら、猫は去った。