2009年4月17日金曜日

童話みたいな

人魚姫は、水の泡になってしまうんだっけなぁ。残念ながら僕はお姫様が出てくるような童話のことは、よく知らないんだ。
氷の姫は、温かくなったら一体どうなる?
溶けてしまうのか、蒸発してしまうのか。
僕の気も知らないで、冷凍庫の中の姫はぱちくりと睫毛を動かして小首を傾げる。
姫は小さい身体だけれど、冷凍室の中で窮屈そうに横たわったり、膝を抱えて座っていたりする。
おかげで、この新しい冷蔵庫が来てからというもの、氷も作れない(焼酎をロックで飲むのが好きなのだ!)し、冷凍食品も買えない。
例えば、僕が姫にキスをしたら(だって、たぶん、そういうものだろ?)、僕が王子になるか、姫が普通の女の子になるか。
だけど、どっちの展開になる人生もなんだか自分じゃないみたいで、結局今夜もため息をつきながら「おやすみ」と冷凍室の引き出しを閉めるのだ。

(359字)