2008年7月4日金曜日

微生物

腐り沼で繁栄した微生物は、自己を【やもねへ】として認識していた。やもねへは分裂で繁殖するので交配は必要ないが、やもねへはやもねへと出合うと融合し、フュシャの粘液をとろとろと出す。しばらくすると離れていくが、二つのやもねへは、融合する前のやもねへと全く同じとは言いきれない。
腐れ沼には無数のやもねへがいるから、フュシャの粘液が絶えず溢れている。沼はつまりフュシャの粘液そのもので、沼にはやもねへしかいない。
生暖かいフュシャの粘液のために、腐れ沼は赤紫の湯気を立ち上らせている。が、その湯気が腐れ沼の周囲に密生するフクシアの花を一年中咲かせていることは、やもねへは知らない。