2006年7月2日日曜日

深い川

フローライトの結晶の中に川が流れている。流れの速い深い川。
僕はじっとそれを見ていた。
水の音が聞こえる。瞬きすると覗いていた川が目の前を流れていた。ここは、一瞬前には、手に持っていた結晶の、中だ。
結晶を持っていた左手には、何もない。
「外から見てたでしょ?」淡いピンクの女の子がいた。
ここが結晶の中だと、確信せざるを得ない。
「この川に見とれていたんだ。力強くてカッコイイ」
「じゃあ、川に入れば」
ピンクの女の子は僕の背中を押した。
瞬きをすると、僕は右手にフローライトを握っていた。
覗いても川はもう流れていない。