2003年7月11日金曜日

散歩前

突然、扉がバタバタと開閉しはじめた。
「散歩に行こうか」
ぼくと小父さんは同時に言い、立ち上がった。
「さてと……どっちの道に行くかな。…道化師の所にでも行ってみるか」
「ぼくもそう思ってたところ」
ぼくたちは夜道をゆっくりと歩きだした。寂しい道化師のアトリエに向かって。
もちろん扉がバタバタしたのは道化師の「会いにきて」の合図だ。
でもここはあくまでも〔散歩がてら〕のフリをしてやらなけりゃいけない。
そうしないと道化師は「わざわざ会いにきてもらうなんて申し訳ない」って泣いちゃうんだから。