2003年5月16日金曜日

ハーモニカを盗まれた話

「上手いもんだな。どうしたんだ、そのハーモニカ」
「拾った」
{錆びている}
「うん」
{出ない音もある}
「いいんだ」
ぼくはハーモニカを吹き続けた。
小父さんとフクロウは静かに夜空を眺めている。
雲が月を覆い始めた。
「こりゃそろそろ帰らないといかんな。雲が厚いと帰りが面倒だ」
小父さんはヒュンと口笛を吹きコウモリを呼ぶ。
「じゃあな、少年」
「ばいばい」

手の中のハーモニカは小父さんがいなくなるのと同時に消えた。
ベソをかきながら部屋へ帰ると
机の上にピカピカになったぼくのハーモニカがあった。