2019年12月14日土曜日

擽りの刑

「腕から行きましょう」
と、主治医はゴム手袋を手にしながら言った。
シャツを脱ぎ、左腕を差し出す。

「上腕の内側だったと思います」
スタンプを捺す白い服の男の様子を思い出しながら言った。

主治医の手が、左腕の内側を撫でていく。
「ひっ!」
思わず声が出た。擽ったい。
「動かないで」
主治医が硬い声音で言う。
「羽毛でくすぐられているようです……」
そばにいた若者が、掴まれと目配せする。手首を握ってしまったが、ずいぶん力を入れてしまう。あまりにも擽ったいので、緩められない。
こちらは苦痛に耐えながら笑い震え、若者の手首を握りしめる。
彼は強く握られた手首の痛みに顔を歪ませる。
「申し訳、ひゃっ! ない……」
一秒でも早く終わってほしい。
「ああ、ここだ」
モニターにスタンプが映し出された。