2019年5月4日土曜日

涙の重さ

ぽっかりと体に穴が空いたようだった。喪失感というのは、この事を言うのだなと、嗚咽しながら、頭の端で冷静に分析していた。
なかなか泣き止むことができない。オニサルビアの君は、やはり近くにはいないようだった。老ゼルコバは、もちろんいない。白くサラサラと崩れていく様子を思い出し、また涙が溢れてくる。
涙が重い。こんなに泣くのは、大人になって初めてだから、涙の重さなんて忘れていた。

流れるままになっていた、ようやく涙や鼻水を手で拭った。
「痛っ」
細かな水晶のような、ガラスのような、透明な欠片が涙を拭いたはずの手のひらにびっしりついていた。