2019年3月31日日曜日

花吹雪

ものすごい拍手だった。物陰に潜んで、様子を窺っていた人々が一斉に出てきた。
そして、ありとあらゆる色彩と、ありとあらゆる大きさの花びらが降ってきた。舞い散る花びらで周りがよく見えない。

消えず見えずインクの旅券を持つ旅の者と、青き鳥、ここにあり!」
さらによく通る低い声で、青い鳥が言った。

人々は「佳い花を」「佳い鳥を」と交互に叫んだ。

「佳い花を!」
「佳い鳥を!」

花びらはどんどん降り積もり、もう足首まで埋まってしまった。
あらゆる花の芳香と鮮やか過ぎる色彩で、立っているのがやっとだ。
青い鳥は、よい気分になっているらしい。堂々とした様子で周囲を見回している。

「佳い花を!」
「佳い鳥を!」

なんなんだ、これは一体。
急に崇められたような事態になってしまった。ついさっきまでの孤立感が、恋しくなる。

オニサルビアを生やした人も、さすがに驚いた様子で「こんなことになっちゃって、ごめんなさい」と耳打ちしてきた。
「一度、ここを離れましょう」