2015年1月27日火曜日

傘葛(カサカズラ)

蔓性の植物。湿度と気圧を感知して、傘を花として咲かせる。採取した花は傘として実用可能。色や柄は様々で、時に派手な傘を咲かせる。

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 「傘、採っていけよ」と、祖父が言う。えー傘採るの面倒なんだよな。もう学校行く時間だし……。玄関で「人工の傘」を持って出ようとすると、「傘、採ったか」とまた祖父の声がした。今度はちょっと怖い声。私はため息をついて傘を置くと、枝切バサミを持って庭に出た。
 うちの庭には「傘葛」が生えている。いまでは珍しくなった傘葛を祖父は大事にしていて、市販の傘は生まれてこの方買ったことがないのがご自慢だ。
 私は傘葛に近づくと、程よい傘を探してバチンと枝切バサミで切った。今日の天気予報は昼から雨。まだこんなに晴れているけれど。
 傘を開く。ごくたまに、穴の空いた傘とか、芯が曲がって開かない傘があるのだ。今日の傘は、大丈夫。大丈夫だけれど、なんだかいつもと違う。
 昼からの雨は、雨ではなかった。飴だった。「人工の傘」だったらたちまち穴だらけになっていただろう。
 傘に当たる飴の音を聞きながら帰ると、祖父が嬉しそうに傘葛を世話していた。「じいちゃん、飴が降るってわかってたんだね」
「この飴は傘葛が降らせたんだよ。そろそろ肥料を欲しがる頃合いだと思ってた。ほら、今日の傘はペロペロキャンディー柄だっただろう?」


幻想植物ポケット図鑑、未投稿作