2011年10月25日火曜日

山中の活劇

猟師が狙うのは、猪か、鹿か……。


鷲は、高みからそれを見物していた。腕のいい猟師だが、まだ獲物の存在に気づいていないようだ。


右に行けば、まもなく鹿に気づくだろう。まっすぐ行けば猪。きっと猪を狙う。


鷲は、そう読んだ。銃声に驚き油断した鹿を、鷲は頂くつもりだ。


猟師は、まっすぐに進み、まもなく猪に気づいた。銃を構える。


鷲は、すっと鹿を狙って下降を始めた。


だが。もう一人の猟師が、鹿を見つけていたのだ。


よりによって日頃、鷲が馬鹿にしていた、下手な鉄砲でいくら撃っても当たらない猟師だった。


猪を仕留めた猟師が合図する。「鷲が来るぞ!」


鹿を狙った弾は逸れ、まっすぐに鷲に向かった。


 


繊細な鹿は、猪を撃つ音で気絶して、鷲を貫いた銃声で目覚め、ぶるりと身を震わせると走り去った。


知らぬは鹿ばかり。