2011年10月21日金曜日

大猩々に包囲されて

森の中を彷徨い、観念したとき、銀色の背中を持った大猩々に出会った。立派な男である。


大猩々は、私を背中に載せると歩きだした。握った拳を大地に突きながら、ゆっくりと歩く。


そのうち、疲れていた私は眠ってしまった。乗り心地が良かったのだ。


目が覚めると、私は大勢の大猩々に囲まれていた。とてつもない恐怖が沸き上がってきたが、銀色の背中を持つ男に運ばれたこと思い出し、彼らの見守るような視線を感じると、次第に気持ちが和らいできた。


彼らは、歓待してくれた。しかし、警戒もしていたのか、包囲は解かれないままだった。


もっとも私は衰弱していて、自力で逃げることはできなかったのだが。


彼らの与える食事と寝床で、私は次第に回復していった。


幾日が経ったのだろう、このまま森の住人になれそうな気がし始めていた頃に、「ヒトよ、そろそろ帰りなさい」という男の一声で、再び銀色の背中に跨った。


「ここでお別れだ、ヒトよ」


「お礼が何もできない……」


私が涙ぐむと、「森を守れ」とつぶやいて、彼は去っていった。


森の夜は暗い。見送ろうにも、木々に紛れてあっという間に姿は見えなくなった。


去りがたくて、しばらく森を眺めていると、一瞬だけ月の光に照らされた銀色の毛並みが見えた気がした。