2010年2月6日土曜日

来年咲く花

幼稚園に入ったばかりの妹が熱心にどろんこ遊びをしている。まだきれいな砂場遊びの道具を持ち出して、庭にしゃがみこんでいる。
いつもは「どろんこ遊びはおててが汚くなるから、イヤなの」と澄ました顔で言うのに、どうしたことだろう。妹は、憎たらしいほど子供らしくないのだ。
「何して遊んでいるの?」
「お花をうえたの」
へえ、花か。
「何の花?」
「わからない。きいろい花」
「いつ咲くの?」
「らいねん」
まだ文字の書けぬ妹にせがまれて、私は「来年咲く花」と書いたプレートを庭の一角に刺した。

芽が出て、茎が伸びて、つぼみが膨らむ。妹は先月、初潮を迎えた。
「やっと咲くのね、この花」
「ううん、来年よ」
妹は澄ました顔でそう言った。
私が書いた「来年咲く花」のプレートは、奇妙に新しいままだ。

あきよさん
いさやん
砂場しゃん
武田のお方
三里さん


読み比べてみたり。(呼び名の五十音順)
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