2008年8月30日土曜日

緊急事態と私

タツマキ警報が出された。避難を呼び掛けるスピーカーのポールにお猿のようによじ登る。
「南西から巨大タツマキが接近中であります。町民の皆さま方におかれましては、速やかな避難をお願い申し上げます」
スピーカーから聞こえる避難勧告が私の耳をつんざく。
「あと数分でタツマキが我が町を通過します。今から避難してももう間に合わない。責任取れません」
スピーカーはまるで私を非難するように喚く。スピーカーを支えるポールがぐらぐらと揺れるのは、タツマキのせいで風が強くなったからか、スピーカーが私を振り落としたいからか。
ようやくタツマキが見えてきて、私は指笛を鳴らす。呼応するように、タツマキがこちらに向かってくる。
タイミングをはかって、両手を離す。タツマキがぐるんと私を飲み込む。
「いらっしゃい」
懐かしい声。久しぶりだね、リュウの小父さん。
私と小父さんはぐるぐると廻りながら再会を喜ぶ。