2008年6月27日金曜日

瞬間移動

忙しくて。あんまり忙しくて。いつのまにか出来るようになってしまいました。
男は照れながらそう言った。照れ笑いですら、まぶしい。この笑顔が彼を忙しくしたのだろう。
けれど、アレはひどく消耗するのです。使う度に身体のものが奪われます。
「それは、気をつけないといけませんな。お仕事にも差し障りがあるのでは?」
お気遣い痛み入ります、では、失礼します、と頭を深々と下げた五秒後、彼はテレビの中で笑顔を振りまいていた。
その後、私はテレビで彼を見るたびに、彼のつむじが気になって仕方がない。