2006年12月26日火曜日

かつてコーヒーでいっぱいの地球

世界地図に零れたコーヒーは、七つの海を茶色く覆った。
海がコーヒーになったから、コーヒー豆農家はたちまち仕事を失った。
コーヒー好きは島や沿岸部に街を作り、コーヒー嫌いは内陸へ移った。
だが次第に雨もコーヒーになり、内陸でもコーヒー以外の液体を得るのが難しくなった。山の井戸水からもコーヒーが、泉にもコーヒーが湧きはじめた。
でも、布きんを取ってきたから大丈夫。
世界地図は防水加工してあったから、海をすっかり覆ったけれど、染み込みはしなかったんだ。
零れたコーヒーはすべて世界地図から拭き取られ、海は塩水に戻った。
でも一度仕事を失ったコーヒー豆農家は戻らない。
翌日、コーヒーの存在は世界から消えた。