2004年6月4日金曜日

サンタさんのお仕事 後編

三太は、オムツの保管場所を確認したあと、台所に向かい、ミルクの支度をして寝室に戻った。
「ふぇ……」
「来たでござんすよ」
目が覚める寸前を捉え、赤ん坊を抱き上げ、寝室の外に出る。
「よしよしでござんす」
赤ん坊はそれほど大声で泣くこともなく三太の作ったミルクを飲んでいる。
「いい子でござんすなぁ」
そう、三太は夜泣きを盗みに来たのである。
どういうわけか、これだけは中井はまったく駄目で、赤ん坊がいよいよ大声で泣くものだから、危うく家人に見つかりそうになったのに懲りて、ついに夜泣き盗みは三太一人の仕事となった。
この晩、こうしたミルクやりやオムツ替えを何度か繰り返した三太は、明け方メッセージを残して佐藤邸を後にした。
「息子の夜泣きはすべて頂戴した。子守、託児のご用命は、大泥棒サンタまで」