超短編
一月某日、晴。ドヴォルザーク交響曲第九番「新世界より」第一楽章の始めのホルンの音を合図に熱々のアップルパイにナイフを入れる。ところどころレコードがプチッと鳴る。紅茶がおいしい。アップルパイはすぐに食べ終わってしまったが紅茶は湧いて出てくるので、しっかり全楽章を聴いて、席を立った。
一月某日、晴。正月には丸い餅と四角い餅を食べることにしている。丸餅は煮て、角餅は焼いて食う。両方の餅を食べるのは幾つかの事情と信条と心情を丸く収めた結果だが、丸でも角でも餅は美味いと毎年思う。ただし、丸餅は角餅に角を立てる。焼かれて膨れた角餅を嗤うのだ。丸餅を諌めるのも毎年恒例。