2018年2月18日日曜日

豆本の世界9

 その古くて厚い本は、自分の中に収められているのが、壮大な、かなしい詩であることを知った。それを知るのに要した三百年の歳月は、己の体である紙や革の傷みで感じていた。
 本は、涙を流した。ポロリと零れ落ちた涙は書棚を転がり落ち、短い、かなしい詩を収めた豆本となった。
 「この豆本を誰かが拾い上げるのはいつのことだろう。きっと私は、かなしい詩とともに朽ちるのだ」と、本は思い、また涙を流した。