2017年2月12日日曜日

二月十二日 黒い王

昨夜、黒い王が好んだという酒を飲んだ。
黒くて、ローストした香りの中に、甘い果実を感ずる。ねっとりとした酒であった。アルコール度数は極めて高い。 わずかしか飲まなかったにも関わらず、浮遊感に取り込まれる。

おかげで、今日は一日、黒い王の幻影とともにあった。黒い王は一切の光を弾かない王冠をしていることがわかった。私はその闇のような王冠に触れてみたくて、何度も手を伸ばすのだが、そのたびにするりと王は消えてしまう。

日が暮れると、黒い王は本当に消えた。