超短編
ずいぶん、蛙をよく見る一日だ。駅のホーム、ラーメン屋の行列、喫茶店に飾ってある絵画……みんな蛙だった。神社の狛犬、レンタルショップの映画、スーパーの時報……ぜんぶ蛙だった。妖術使いがいるに違いない、と気をつけていたけれど、結局妖術使いには出遭わないまま家に帰った。風呂にはいると、足の爪が、ガマガエル色のペディキュアで染まっていた。(170字)
太田記念美術館の江戸妖怪大図鑑、全三部コンプリート。