2011年3月29日火曜日

土星が三つ出来た話

二つ目の仕事は、土星にプレゼントするための輪を作ることだった。
これも、「月の人」が交代するたびに行われる儀式のひとつらしい。
何度か作り直しをし、ようやく満足のいく出来栄えの輪を作り上げ、土星もずいぶん喜んでくれた。
「上手く出来たじゃないか」と、旧お月さまも褒めてくれた。
輪の変化に気がついたのだろうか、天文学者が寄稿した「かつてなく美しい土星」と題した記事が新聞に載った。
なんとも照れくさい気持ちになりながら、新聞をスクラップして、壁にピンで留める。
気がつくと、机の上に置いてあったはずの失敗した土星の輪がなくなっていた。星たちに訊いても、わからないという。
翌日、新聞一面に「フェイクサターン現る」との記事と、二つの偽土星の望遠鏡写真が掲載された。