2006年4月19日水曜日

眼球

僕たちは貧乏だったから、ボール遊びの時には、眼球をよく使った。
僕の眼球は小さかったので、手や板っ切れを使ってピンポンをした。
キャッチボールにはヨシオの左目が重宝した。
サッカーをしたい時には、アキラの眼球を使った。
アキラはとても嫌がったけれども、頼み込んで右目を借りた。
右目を外してがらんどうになったアキラの大きな眼窩を
そこにいるべき眼球を胸に抱えながら覗くと、僕はいつも小便がしたくなった。
慌て茂みを探して、アキラの眼球を傍らに置いて、その視線を感じながら立ち小便をした。
外した眼球が見る風景は、アキラには見えない。
でもそれは、紛れも無くアキラの視線だった。
小便を終えた僕は、わざと勢いよく眼球を蹴った。
今も時々、眼球を外してみる。
ピンポンをした跡が微かに残っている。
アキラの眼球にも、僕の足跡がまだ付いているのだろうか。