2005年2月1日火曜日

素敵なお茶会

「いらっしゃい、ユウタくん」
ぼくがタキコさんのアトリエに呼ばれたのは、父さんからお使いを頼まれたからだ。
 タキコさんは学校を出て三年の絵かきで、父さんの作る筆を使っている。言わばお得意さんだ。
今日父さんは外せない用事ができたので、ぼくが代わりに筆を届けに来た。
 タキコさんのアトリエは絵の具や筆、得体の知れない細々としたものがそこら中に散らばっているし、絵の具の匂いが充満しているけど、それをイヤだとは思わなかった。それどころか、なんだかワクワクする。
「遠かったでしょ?お駄賃あげなきゃね」
タキコさんはイタズラっぽく笑った。父さんがお金を貰ってきたら駄目だと言ったのをわかっているのだ。
「お茶にしましょ。こっちにいらっしゃい」
テーブルには、サンドイッチとマグカップとバスケットに入ったいくつかのタマゴとポット。
タマゴ?
「何飲む?紅茶でもココアでもジュースでもいいのよ。」
「寒かったから…ココア」「はい、じゃあこれ」
タキコさんはタマゴをひとつ、ぼくのカップに入れた。
「え?」
「あら、ユウタくん、エッグココア初めてだっけ?じゃあ見てて。カンタンだから」
タキコさんはタマゴをひとつカップに入れた。
「わたしのはエッグティー、紅茶よ」
と言いながら、そのままお湯を注いだ。
「できあがり。んーいい香り。はい、ユウタくんの番」
ポットを渡され、恐る恐るカップにお湯を注ぐと、タマゴが溶けてココアになった。
「すごい!おいしい!」
「よかった。サンドイッチもたくさん食べてね」

 タキコさんのアトリエを出るとき、ぼくは言った。
「ねぇ、タキコさん。また遊びに来てもいい?」
「もちろん」
今度来る時はタキコさんの好きなケーキを買っていこう。