2002年9月17日火曜日

夕焼けがくれたエジプト

近所にそれは見事な三角屋根の家がある。
屋根は薄汚い海老茶色に見えるのだけど、
古い家だから当初の色が何だったのかはわからない。
さらに言うと、僕はその家の屋根しかみたことがなかった。
普段はその家の前を通るわけではなかったし、
なにより、その家は塀が高かったのだ。
それは、辺りの雰囲気を異質なものにしていた。
特にここ数年、周囲の景色から置いてけぼりにされていく様は
目を背けたくなるほどだった。
ところが、ある日を境に激しく惹きつけられるようになった。
その日、夕焼けの中を歩いていると
突然、宙に浮かぶピラミッドが現れた。
それがあの、三角屋根だったのだ。

パウル・クレー≪エジプトに捧げる小さなヴィネット≫をモチーフに