2010年8月31日火曜日

お月さまとケンカした話

「あ、こないだはタバコをありがとうございました。美味しくて、つい灰まで食べちゃいました」
月から出てくる人にばったり出会った。
「え、灰を食べたって。なんてことをしたんだ!」
お月さまは、さっと表情を強ばらせた。
(彼が本来の意味で「お月さま」かどうかはわからないが便宜上そう呼ぶことにする。ちなみに、「お月さま」とか「お月さん」とか呼びかけると、彼は普通に返事をするのだ。)
「食べちゃいけなかったんですか?」
「タバコの灰を食べる奴がどこにいる?」
お月さまに胸ぐらを掴まれる。
「食べるなって言ってくれればよかったのに」
「タバコの灰を食べる奴がどこにいる?」
お月さまに突き飛ばされる。
「だって美味しかったんですよ。甘くって」
「タバコの灰を食べる奴がどこにいる?」
お月さまはポケット灰皿を取り出して、灰をつまんで口に放り込む。