「お月様をあげます」
月と少女は、男に声をかけられた。
差し出された手には「月」と書かれた紙があった。
二人が何も言わずにいると
「お月様をあげます」
ともう一度言う。
「月は私だが…」
と月が言いかけると少女が遮った。
「ありがとう。お礼に飴あげる」
男はニコリとして去って行った。
「なんだ今のは。キナリ、やっぱり文句を言ってくる」
すぐに「お月様をあげます」と後ろでも声がして月は溜め息をついた。
その晩、街を歩く人は皆「月」の紙を持っていた。
「ねぇ、ナンナル。あの人、お月様がきれいなことをみんなに教えたかったんだよ。ほら、みんな月見ながら歩いてるよ」