超短編
鋏を使えるようになってすぐに、紙よりも布を切るほうが気持ちがよいと気がついた。古いシーツを豆粒大になるまで切り刻んだ。裁鋏に合わせるように右手ばかりが成長し、身体に不釣合いなほど大きくなった。今も私は裁鋏を持つ。夜の帳に鋏を入れ、朝を迎える。誰より早く朝の光を浴びる、よい仕事だ。
++++++++二次選考通過
三月某日、曇。家中の鏡を磨く。洗面所、姿見、いくつかの手鏡。霧を吹き、拭き上げると期待以上に綺麗になった。鏡の中の顔は変わり映えないどころか年を経る一方なのに。一番小さな古い手鏡を磨き終え、外を見ると窓硝子が今まさに暴風雨に曝されたかのように汚れていた。鏡が羨ましかったとみえる。
三月某日、曇。遠い町から小包みが届く。宛先として書かれた手書きの文字がくっきりと整っていて、自分のことだと思えない。矯めつ眇めつしてから包みを解く。中には葉っぱが入っていた。ほんのり香りがする。「燃やすと貴方に贈る言ノ葉が立ち昇ります」と説明が入っていた。そういう貴方は誰ですか?