超短編
「しかし、考えがやや変わってきました。崩壊する本や、段々と本が減っていく本棚を見ているからかもしれません」自動人形の司書は言った。私は私で、壊れた自動人形たちをどうにかできるのかどうかを考えていた。工学博士、科学者、技術者、外科医、人形師、指物師――さまざまな人の顔を思い浮かべた。
「学者は、『死んだ自動人形を葬る方法』を考えて、それを私に託してくれました。しかし、長い間、実行できずにいます。将来、この祖先たちを修理できる者が現れるかもしれない。この不可思議な自動人形という物から何か新たな発見があるかもしれないと考えていたのです」と、自動人形の司書は語った。
「触ってもいいですか」と問うと司書は頷く。肌も血管も関節も、人工的なようでいて、生物の感触もある。「この素材は?」「わかりません」有機物と無機物が無秩序に混ざり合っていて学者も解明できなかった、と。「私たちがなぜ人形になるのか、どのように人形になるのか、まるでわからないのです」
学者でも書き残していないものを私が調査してよいものだろうか。だが、司書は拘る様子もなく地下室へ私を案内した。そこには三体の自動人形が安置されていた。「私の親、その親、さらにその親です」どれも損傷が激しく痛々しい。脚を失った者からは血管ともコードともつかない細い管が無数に見えた。
「自動人形の頭脳はどうなっているのだろう」という疑問と好奇心は日に日に強まる。司書も人だった頃の記憶と、自動人形になってからの記録を器用に混合しながら行動しているようだ。だが、やはり学者はそれについて書き残してはいない。「修理不能になって保管されている私の先祖たちを見てみますか」
トイは驚くほど記憶力がいい。これは自動人形の一族の特徴でもあったがトイは特に秀でているようだ。「自動人形になったらトクの声で再生するように話しますよ」トイはいつの頃からか私のことを「トク」と呼ぶようになった。篤学者の「トク」で、自分の名前の「トイ」と似ているのも気に入ったらしい。
月日は流れ、本は残り少なくなり、壺が増えていく。本より壺のほうが多くなってきた頃から図書館の棚とは思えない光景となっていた。書物の霊廟と呼びたくなる。複雑な感情だが、学者の本はどれも面白く、今更読むのをやめることなどできない。読んだ後は、故郷の紙に書き留め、トイに語って聞かせた。