「見て、ナンナル」
少女の手にあったのは、ゴツゴツした石だった。黒くいびつな形の石てある。
「道に落ちてた」
「ただの石だろう」
月が関心を示さないので、少女は早口になる。
「歩いてたら、ガォって声が聞こえたの。でも誰もいなくて、でもずっと聞こえてて、そうしたらこの石が道の真ん中に落ちてて、近付いたらガォも大きくなって」
「ガォ」
「ほら!おもしろい石でしょう!キナリの宝物にする」
月はため息をつく。
「キナリ、鬼のところに行くぞ」
「オニ、これ見て……」
「まあ!これは鬼の卵よ、キナリちゃん。最近、卵を棄てる輩が多いの。育てる自信がないんですって。育児拒否よ。この子はあたしが預かるわ。拾ってくれなかったら、今頃自動車に轢かれてベチャンコよ。ありがとう」