懸恋-keren-
超短編
2005年5月25日水曜日
自分によく似た人
「コラ!キナリ、駄目でしょ!」
少女はハッとした。「なにもしてない」と言おうと思った。
しかし、振り返った少女の目に飛び込んだのは、彼女よりずっと小さな五才くらいの女の子であった。
「ねぇ、あなたもキナリ?私もキナリっていうの」
少女は怒鳴っていた母親を見上げると、言った。
「キナリちゃんのお母さん。キナリちゃんと遊んでもいい? わたしたち、とても仲良くなれると思う。だってこの子、リンゴ味の飴が大好きでしょう?」
二人の「キナリ」は、べぇと舌の上の飴を出して見せた。
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