少女が目を覚ますと、黒猫の姿が見えなかった。
少女は黒猫から切り取った尻尾をにぎりしめて、夜明け間近の街へ出た。
公園のベンチでは、背の低いコルネット吹きが女の人と寄り添っていた。
街角では、長い名の絵かきが寝ていた。近付くと酒の匂いがした。
鬼のアパートの前に行くと、子供の泣き声と鬼の笑い声が聞こえた。
尻尾を切られた黒猫は、牛乳屋でミルクをもらっていた。
少女は黒猫がミルクを飲み終わるのを待ってから、強く抱きしめた。
〔色々なものを見たのだな。あのような姿も彼等の現実だ。何かが変わったのではない。キナリが知らずにいただけだ〕
猫の饒舌もまた、夜明け前。