チョット・バカリーはコルネット吹きだ。夜の広場でコルネットを吹き、硬貨を貰う。
時に力強く、時に切ない調べが、彼の小さな身体から溢れだす。銀メッキのコルネットを通して。
この晩、広場には老人が一人いた。
「ああ、あんたがラッパ屋かね」
「はい」
「今日は何と言う曲をやるのかね」
「『カメレオンの娘さん』を」
「ああ、あれは名曲だ。……月はカメレオンが支配していると、知っているかね」
「いいえ」
「昔、月に行ったおりに見てきたのだ。月をカメレオンが舐め取って満ち欠けを起こしていた。見事なものだった」
チョット・バカリーは『カメレオンの娘さん』を始めた。
その曲の間、月は黄色から緑色へ。緑色から銀色、銀色から紫色へ、と次々色を変えた。
いつの間にか、キナリとナンナルが来ていた。ナンナルはプリプリと怒っている。
それを見て、チョット・バカリーは愉快になった。